犬下痢

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犬が下痢 !? その時の対処法は? 犬が下痢 をする原因、治療法、知っておくべき留意事項って何?

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更新日

 
執筆:碧井 香 (獣医師・獣医学博士)
 
 
犬が下痢をしたら、どのように対処すればいいでしょうか?家で様子を見るのか、病院に連れて行った方がいいのか、犬の下痢の原因は何が考えられるのか、その対処法は何か… と心配の余り、多くの疑問が湧いてくるのではないでしょうか? この記事では、 犬が下痢 をした時に、知っておくべきポイントをまとめてみました。
 
 

犬が下痢 をした時の対処法は?

犬に元気があり食欲もあるなら、家で少し様子を見るのもいいでしょう。その場合は、下痢による脱水に注意して下さい。犬の胃腸を休めるために食事制限(半日から1日の絶食)をしてみてもいいでしょう。
また電解質も不足してしまうのでOS-1などの経口補水液なども有効ですが、これは原因が重篤でない場合の対処法なので、何か心配な点がある場合は、病院へ行って獣医師に相談してください。
犬にいつもの元気がなく、食欲もない場合、また他の症状(嘔吐、便に血が混じる、便に虫がいたなど)を併発している場合には、様子をみることなく、速やかに病院に行くことをお勧めします。
※なお犬の血便、血尿、下痢等諸症状については以下の記事も参考にしてください。
「犬の血便について」
「犬の血尿とは」
「犬が吐く場合は?」
 
 

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犬が下痢をした時の原因は?

下痢とは、便の水分量が増えた状態です。犬の体の中の水分が便に移行している異常な状態を指します。しかし、下痢の原因は病気のみではありません。人間ではアルコールを飲み過ぎた時や、牛乳を飲んで下痢をしてしまう人、あるいはストレスでおなかが痛くなる人など病気以外で下痢をするケースがあります。
犬の場合も、下痢の原因はそのような生活面の影響や環境の変化と、感染症や消化器の病気などに大別されます。また、犬が、突然下痢になったのか(急性下痢)、下痢を繰り返しているのか(慢性下痢)に分けて考えることも重要です。
 
急性下痢の場合、犬が感染症(細菌性、ウイルス性、寄生虫)にかかっていることが疑われます。環境の変化によるものとしては食事内容の変化や拾い食い、長時間の移動や自宅以外の場所に預けられたストレスなどが考えられます。
慢性下痢の場合、特殊な病態が隠れている可能性があります。下痢があまりにも続く場合は一度検査をしてもらった方が安心できるでしょう。腫瘍性、炎症性、食餌性、感染性、機能性、膵外分泌性など、さまざまな原因があり詳しい検査が必要になります。
 
 

犬が下痢をした時の原因別の治療法は?

獣医師の診断はどのように行われる?

病院に行くと、問診で下痢がどのような状態なのか、体調はどうかを聞かれると思いますので、説明できるように以下の点を中心に観察しておきましょう。
 

  • ・どのような下痢か(軟便か水溶性か、血が混じっているか、色は何色か、どんなものが混じっているかなど。もしペットシートなどに下痢が付着している場合は病院に持っていくといいでしょう)
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  • ・いつからか
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  • ・1日何回下痢しているか
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  • ・1回の下痢の量は多いか少ないか
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  • ・食欲はあるか
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  • ・元気か
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  • ・体重に変化はあるか

 
それに加えて嘔吐があるか、何か拾い食いしなかったか、生活に変化がなかったかなど獣医師が質問し、必要に応じて検便や採血が行われます。
 
 

急性下痢の場合

 
・食餌性、ストレス性の急性下痢
下痢の原因と思われる食材、あるいはストレスを避けるように指導されます。治療は下痢の程度と脱水の程度により補液、整腸剤、制限給餌(絶食)が主です。
 
 

チョコレート中毒の場合

チョコレートに含まれるテオブロミンという成分によって犬が中毒症状を起こし、下痢をします。症状としては他に多尿、嘔吐、興奮、抑うつ、呼吸が荒くなる、筋肉けいれんなどがあります。解毒剤はありませんので、すぐに吐かせなければなりません。時間が経つと重篤な状態になります。
 
テオブロミンとはチョコレートの苦みの元となる成分です。犬がテオブロミンを摂取すると、半分を代謝するのに35時間必要で、かなり長い時間体内に残っています。この長い滞留時間が中毒を起こしやすい原因と考えられています。チョコレート中毒には、解毒剤や中和剤がありませんので、とにかく早くチョコレートを体内から排出する事が重要です。体内からチョコレートを出す方法としては、吐かせることですが、その他胃洗浄を行う、活性炭を用いて毒物を吸着する等の方法があります。
摂取量が多いと命に関わるケースもあり、迅速な対応が必要です。またテオブロミンは、ココア、お茶、コーラ等にも含まれますので注意が必要です。
 

感染症の場合

細菌性、ウイルス性の場合、治療は同じになります。ウイルスには直接効く薬剤がないため、対症療法が行われるからです。基本的な補液、整腸剤に加え、抗生物質(ウイルス性に対しては2次感染防止のため)が処方されます。
寄生虫感染が確認された場合、駆虫薬が処方されます。また便に寄生虫や寄生虫の卵が排泄され感染が拡大する恐れがあるので、生活環境の清浄化や、飼い主への感染防止(手袋をして汚物を片付けるなど)の指導も行われます。
重篤な感染症の場合には激しい下痢を繰り返したり、血液が便に混じっていたり、嘔吐したり他の症状も見られることがありますので、その場合にはそれに応じた治療が行われます。
 
 

慢性下痢の場合

食餌療法と下痢止めの薬が処方されます。食餌は急性の場合と異なり、低脂肪のものを少しずつ与える方法を取ります。
 
 

炎症性の場合

慢性特発性腸疾患はさまざまな原因が引き金となりますが、詳細は明らかになっておりません。治療は難治性で長期にわたる食事療法や投薬が必要です。
 
 

腫瘍性の場合

腫瘍は性のものと悪性のものがあります。レントゲン、エコー、内視鏡検査などに加えて、確定診断のために試験的開腹が必要になる場合があります。その後、外科的に切除したり、化学療法を行ったりします。
 
 

アレルギー性の場合

どの食物に対してアレルギーを起こしているのかを特定し、アレルゲンフリーの食餌を与えます。
 
 

機能性の場合

腸閉塞は腸に何かが詰まって内容物が通過できなくなる状態です。おもちゃなどの異物を飲み込んでしまったり、腫瘍や寄生虫などでも起こります。レントゲン、エコーなどの検査後、外科的に処置を行います。
腸重積、腸捻転は、腸自体が重なったり絡まったりして腸の内容物が通過できなくなる状態です。この場合も同様にレントゲンやエコーの検査後、外科的に処置します。
 
 

その他の場合

膵炎、膵外分泌不全、胆汁の分泌障害による疾患なども慢性の下痢を引き起こします。治療は各々の病気に対して行われます。
 
 

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症状別対象法とは

 
犬が下痢をし、加えて嘔吐したり、震えたり、食欲がなくなったり他の症状を伴うとき、どのようなことが起きているのでしょうか?今回は症状がいくつかある場合の対処法についてまとめました。
 
下痢は水分の多い便を排泄することですが、原因には次の4つがあります。

  • ①小腸の水分吸収能力の低下
  • ②腸管の水分分泌の亢進
  • ③大腸の水分吸収能力の低下
  • ④腸管の炎症による炎症性さん出物

これらの起因となる事が、+αの原因にもなり得る場合と、全く別の起因で下痢と他の症状が同時に発生する場合があります。
 

下痢+嘔吐

嘔吐は胃粘膜や腸管の刺激、内臓の刺激、脳の刺激で起こるので、下痢の原因が嘔吐も引き起こす場合があります。また、下痢によって起こる体内の変化によって2次的に嘔吐が引き起こされる場合があります。
 
腸炎の時に下痢と嘔吐を発生することが多く、過食、食餌アレルギー、ストレス、薬物、腫瘍、感染症(犬パルボウイルス感染症、犬コロナウイルス感染症、犬伝染性肝炎、レプトスピラ症)、寄生虫、肝不全、膵炎、尿毒症を伴う腎疾患などさまざまな原因があります。
 
下痢が起きると、体内の水分が失われるので脱水状態になります。脱水になると血液が濃縮され、循環血液量が減少します。その結果、各臓器で酸素が足りなくなるのですが、それを補うための作用が働き、結果的に代謝性アシドーシスになります。代謝性アシドーシスとは体内のイオンバランスが崩れることによって酸性に傾くことです。その結果、嘔吐が引き起こされます。
 
注意すべき点は、下痢と嘔吐が見られたら、家で様子を見る状態ではないので、出来る限り早く受診することです。病院での対処が必要です。また、吐物で窒息しないように横向きに寝かせて運んでください。口の中に吐物がある場合には掻きだしてください。
 

下痢+震え

震えは筋肉の不随意運動です。振せん、痙攣などがあります。痙攣はてんかん発作などで見られるように脳や延髄に原因があり、意識がなくなったり、全身の筋肉に生ずる場合があるので、震え(振せん)と区別しやすいですが、発作が一部の筋肉に生ずる場合には区別できないかもしれません。振せんは痙攣よりも弱いふるえで様々な原因により起こります。小脳疾患で見られます。このような脳の疾患で神経症状として震えが見られるときは、下痢より嘔吐が見られます。震えの原因が脳にある場合には、たまたまその時に下痢を呈していただけで、原因が別のことも考えられます。
 
下痢と震えに関連がある場合は、低血糖が疑われます。低血糖になると症状として後ろ足のふらつき、筋肉の攣縮、振せん、痙攣などが見られます。下痢の治療の一環として絶食したり栄養が上手く取れていなかった場合にそれが低血糖の原因となります。他にも腫瘍、吸収不良症候群、肝炎、肝硬変、門脈シャント、肺血症、脳疾患なども低血糖の原因として考えられます。
 
また、下痢で代謝性アシドーシスになるとその結果、高カリウム血症、高ナトリウム血症、カルシウムイオンの低下など代謝障害が起きます。その結果、筋肉に振せんや痙攣を起こすことがあります。
 
震えの原因が低血糖、高カリウム血症、高ナトリウム血症、カルシウムイオンの低下など代謝性のものが原因の場合には速やかに補液を行わなくてはなりません。早急に病院へ連れて行ってください。
 

下痢+食欲不振

食欲不振は空腹中枢の抑制や活性低下、満腹中の刺激や活性化を誘発する疾患で現れます。下痢を起こす疾患においては、胃、腸、肝臓の疾患、腫瘍、毒物、ストレス、発熱、疼痛などが食欲不振の原因となります。
 
下痢の原因を治療しないと、せっかく食べたものはまた下痢になってしまいます。下痢が治まってから徐々に食餌を摂り始めるのがいいですが、絶食状態が続くと栄養不足になったり、体内のイオンバランスが崩れることにより様々な症状が誘発されてしまいます。下痢が治まれば食欲も戻るだろうと放っておくと病状が悪化してしまう可能性がありますので、病院で治療を受けることをおすすめします。
 

下痢が止まらない

下痢の原因が感染症や毒物、食餌の変化やストレスによるものなら、その原因を取り除けば下痢は止まります。感染症や毒物に対する治療をしっかり行った、原因と思われる食餌の与え方やフードの種類を変えた、ストレスと思われるものを除去したなど、対処を行ったのに下痢が止まらない場合には、他に原因があります。獣医師と一緒に何が原因となっているのか、探っていかなくてはなりません。
 
比較的長期に渡って(3週間くらい)下痢が続く慢性腸炎には、腸管内部寄生虫、感染症の長期化、肉芽腫性腸炎、潰瘍性腸炎、好酸球性腸炎などがあります。その他に膵臓、肝臓、胆道の疾患、アレルギー性腸炎、リンパ球性腸炎、形質細胞性腸炎、リンパ管拡張症、リンパ肉腫、ジアルジア症、乳糖不耐症などが考えられます。
 
それぞれの疾患に対しての治療をしますが、中には完全に治癒出来ないものもあります。元気はあるし、食欲もあるからと長引く下痢を放っておくと栄養を吸収できない状態が続き、痩せてくるでしょう。何日も下痢が止まらない場合、または下痢を繰り返す場合は、元気で食欲があっても一度、受診してみて下さい。
 
 

普段の生活での留意点

犬の下痢については、日頃の管理がとても重要です。規則正しい食生活はもちろんですが、なるべくストレスを与えないように心掛けることが大切です。また、ほとんどの犬は牛乳与えると下痢を起こしますので、いつもとは違うものを与えた時には様子を見るようにしてください。
また、チョコレートの誤飲を防ぐために、チョコレートは犬の届かない場所に保管しましょう。
 
感染症に対してワクチン接種は有効です。原因となる犬ジステンパーウイルス、犬コロナウイルス、犬パルボウイルス、レプトスピラなどはワクチンがあるので、接種しておきましょう。感染症が引き金となって重篤症状を引き起こす(慢性特発性腸疾患、腸閉塞など)こともあります。
症状がみられたら、早期に受診することも大切です。早期発見で重症化を防ぐことが出来ます。
 
 

まとめ

ここまで説明した内容のポイントを以下に記しましたのでご参考にして頂ければ幸いです。
 

  • ・犬が下痢をしても元気で食欲がある場合は、犬の脱水や胃腸を休める事に留意しつつ様子を見るのもよい。
  • ・犬に元気がない、他の症状がある場合は、受診をする。
  • ・犬の下痢の原因は、病気だけではなく、ストレス等生活、環境要因による場合もある。
  • ・急性下痢の場合は感染症、慢性下痢だと何かの病気が隠れている可能性があり、検査が必要。
  • ・治療法は、下痢の原因によって異なる。
  • ・犬の下痢は、ストレス管理、飲み物・食べ物に注意する事が重要。特にチョコレートは近くにおかないように留意。
  • ・ワクチン接種は感染症対策として有効なので、忘れないように。

 
 
<執筆者プロフィール>
碧井 香 (あおい こう)
獣医師・獣医学博士。
現在はフリーライターなど多岐に活動。
麻布大学獣医学部卒業 獣医師免許取得、某アニマルクリニックに勤務しながら、同大学院にて獣医学博士号取得、独立行政法人某研究所勤務、アメリカの研究機関勤務を経て今に至る。
 
 

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関連した情報として以下のようなものがありますので、ご参考にしてください。
 
アニマルクリニックまりも院長の獣医師コラムページの中で、犬の下痢・軟便について説明したページである[獣医師コラム] 犬の下痢・軟便、どの程度で病院に連れて行く?原因と対処法について | PetLIVES|愛犬・愛猫と心地よく暮らすWEBマガジンは、犬の下痢などについて分かりやすくまとまっています。

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